報告テーマ
これまでの経緯

2004年3月25日登載(ver1.00)、2004年4月29日更新(ver1.10)


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群馬大学教育学部 所澤 潤
   平成15年11月26日(水) 15:20−16:20
「外国人学級教育実習実施準備打合会」
会場 太田市立旭小学校

  (2004年3月25日14:20頃から使用開始)

出席者
太田市教育委員会 指導主事 恩田由之
太田市立旭小学校 校長 石田成人
教諭 大谷典子
指導助手 根岸 親
太田市立九合小学校 教諭 高橋聖治
境町立境小学校 教諭 横堀宏美
大泉保育福祉専門学校 専任講師 林  恵
群馬大学教育学部 教授 所澤 潤
教授 (司会) 古屋 健
助教授 松永あけみ
助教授 吉田秀文
助教授 中村高康

【報告】

所澤 私のほうからこれまでの経緯ということでお話をさせていただきたいと思います。


 報告の趣旨
 このプロジェクトは、今年から文部科学省の科学研究費補助金により、
「地域の国際化による日系南米人の実態を踏まえた教員養成システム導入のための研究」
という題目で、予算がついています。
今日は取組みの経緯を話すとともに、我々が、外国人の子供の存在を前提にした教員養成システムを形成するために考えていることをお話ししたいと思います。
現在行っていることにはかなり戦略的な面がありますので、そのことを確認しながらお話ししたいと思います。


 取組みの理由
 まず、どういうわけで、この取組みをしているかということを3つにまとめ、簡単にお話しておきたいと思います。
群馬大学では、現職の先生方の大学院教育をしている訳ですが、現場の話として出てくるのが、群馬の東部の所では非常に外国人の子供が多くて、前橋では信じられないような状態になっていると、そういうような話です。
そういうことを聞き始めてからすでに10年ぐらいたっている訳ですが、そういう状態に対応することが必要であり、必ずしも教育がうまくいっていないという情況を改善するために、我々も協力しなければならないのではないか、と考え始めました。
それが第1の点です。

 しかし、今の教育学部の体制は、教員養成の仕組によって細かくしばられているために、現場に起こっている問題にすぐに対応してシステムを変え、教員養成の新しい仕組みを作り出すことはできない。
ただし、その代わりに、大学の場合は、教員の個人の立場で研究する権限が与えられていますので、研究の対象としてその問題を取り上げれば、かなり思い切ったこともすることができる。
それが第2の点です。

 それからもう一つ、学校の国際化というのは、実は、学校教育にとっては非常に魅力的な条件ではないか、というふうに考えています。
これは「大変だ」「大変だ」という話を聞く一方で、問題に深く関わる先生方も現れています。
その先生が取組んでいる様子を見ていると、学校の国際化というのは、日本の学校教育の中に、新しいことを生み出せる大きな機会なのではないかというふうに考えられるんですね。

 我々は、そういうような3つの条件、3つの視点に沿って文部科学省科学研究費補助金の申請を行ったという訳です。


 県下の情況
 もう少し県下の状況について具体的に説明しようと思うのですが、例えば、『ぐんまの学校統計』という統計表を見ますと、平成11年度から14年度にかけて、表のような数字が上がっています。
平成13年度、14年度は、児童生徒の総数も入れてあります。
平成14年度は公立小学校で1,223人、中学校で471人となっています。この5年間ぐらいでもかなりの数が増えています。


  群馬県の在籍外国人児童生徒数           (5月1日現在)

  小学校 中学校
  国立 公立 私立 国立 公立 私立
平成11年度 0 1,141 0 0 364 0
平成12年度 0 1,085 0 0 393 0
平成13年度 0/891 1,091/120,264 0/0 0/497 450/64,305 0/766
平成14年度 0/894 1,223/119,456 0/0 0/491 471/62,465 0/871

   出典:『平成12年度 ぐんまの学校統計』『平成14年度 ぐんまの学校統計』
   数字は(外国人児童生徒)/(児童生徒総数)

 次に、日本語指導を必要とする小中学校児童生徒の在籍数を紹介します。
文部科学省による統計があるのですが、その統計の数値をただ見ただけでは、群馬県の場合人口が少ないのでそれほど多く見えません。
しかし、1人でも在籍している学校の数を基にして1校あたり何人くらいいるかという数え方をしてみると、県同士の比較(在籍数/在籍校数)では、

   平成9年9月1日現在1校あたり5.36人 三重県とならんで全国1位
   平成12年9月1日現在1校当り、小学校が5.88人、全国4位、中学校が3.17人、全国6位

となります。
全国的に見てかなり外国人の子供が密集して在籍している状態になっています。
群馬県は、一部の小中学校に外国人の子供がかなり密集している状態にあるというふうに思います。

 そして、知られているように、外国人の子ども達の多くは、東部地域の学校に偏っています。
一例を挙げると、大泉町立西小学校の平成10年5月11のデータでは、

全児童数が673人、
そのうち外国籍の児童が116人、
その内訳はアジアから5人、
ブラジル籍95人、
ペルー籍11人、
チリ籍3人です。
そしてそのほかに
元ブラジル籍で、日本国籍取得した者が2人いました。

この数はかなり大きなものといってよいでしょう。

 今年の例では、近年外国人児童生徒が急増した伊勢崎市の例を挙げておきます。
伊勢崎市立A小学校とB小学校のデータは表のようになっています。

  伊勢崎市立小学校の外国人児童の在籍状況の例 
                               (平成15年5月1日現在)


 
ポルト
ガル語
スペイン語
 
中国語
 
ベトナム語
 
その他
の言語

 
備考
 
A小

 
28(14)

 
30(15)

 
12(5)

 
15(6)

 
11(3)

 
96(43)

 
フィリピン2、パラグアイ3(1)
B小



 
18(5)



 
21(6)



 
0(0)



 
26(3)



 
5(0)



 
70(14)



 
スリランカ2,パキスタン1,
イラン1,フィリピン1

             ( )の数字は、日本語指導を必要とする外国人等子女数
                             伊勢崎市教育委員会提供資料

 表からは、太田市とかなり様子が異なり、子供達の出身地が色んな地域に分散していることがわかります。
A小学校では、ポルトガル語が28人、スペイン語が30人、中国語が12人、ベトナム語が15人、そのような数です。
B小学校ではベトナム語を母語とする子供が26人もいるのですが、ただ日本語指導を必要とする生徒は3人だということです。
このような県の現状があります。

(OHPを用いた説明)

○ブラジリアンプラザの写真
 ここは皆さんよくご存知だと思います。
○平成8年のデータ
 データは、平成8年当時に聞いたものですが、おそらく、この状況は現在もそんなに大きくは変わっていません。
このデータによれば、日本語を母語としない小中学生の通学地域は東部が56%、中部38%となっています。群馬県中部とは伊勢崎市を中心にした地域です。
地域で見ると東部のこの地域に日本語を母語としない子供が集中しています。
○大泉町立の西小学校と北小学校の外国人の子供がどのように増えてきたのかというグラフ。
 1989年のところで1桁台だったのだが、10年間の間に100人くらいになって、今も西小は100人ぐらいだろうと思いますが、どうですか?
出席者 西小は、今はもうちょっと減っている。
所澤 今はどちらが多くなっているのでしょうか?
出席者 大泉町の中では、今も西小が一番多いです。
所澤 最近は、急激に状況が変わってこういう状況の中で、東部のほうで学校教育の動きが随分変わってきているということも聞いています。


 次にレジュメに挙げてあるのは、群馬県の教師がどういう状態になっているかをざっとまとめたものです。
群馬県下の場合、教師のライフサイクルの一時期に外国人子女教育担当になる者がかなり多いことは確かです。
異動していく中で、採用されてから教頭になるくらいまでの間に、教員としての生涯の中で1回くらい外国人の子供の教育に携わるという教員が非常に多い。
県内の東部の方の先生方はずっと関わっているわけですが、西部、北部などの先生も異動時に出会うことがよくあります。

 突然そのような状況に出会った教師は、当惑します。例えば、

(1) コミュニケーションが成立しない。
(2)児童生徒の転入転出が多く、学級経営が不安定。
(3) 南米文化が日本文化と極めて異質でなじみにくい。

というようなことを感じます。

 教員の心理的負担として、つぎのようなことがあります。

(1) ポルトガル語、スペイン語などの習得が望ましいという心理的圧迫感。
しかも、異動するとまた必要なくなってしまうということが大きな負担です。
(2) 児童生徒の両親の労働条件がとても厳しく、家庭の協力を得にくい。
(3) 日系人の中には、教育を軽視している両親も多いように思われること。
実際に軽視しているということなのかどうかはわかりませんが、
教師には軽視しているような感じがするので、接するのがたいへんだ、ということです。

 そして、教員は次のような無力感を持ちます。

(1) 言語能力の問題から知的教育を十分に受けられない子供たちがかなりいる。
(2) 母語能力も日本語能力も発達しない中途半端な状態で中学生、高校生の年齢になっていくような状況がある。
(3) 外国人の子供の存在への対応はかなり手詰まりになっている。
現時点で教育委員会において実施可能なことは、ほぼ出尽くしているのではないかと思われます。
実際、日本語担当教員配置、日本語教室の設置、教員研修の実施、指導助手等の配置、受入手続きの整備、緊急対応体制の整備……などが行われていますが、思うような成果があがっていないという状況があります。
ですから、現行法令の枠を越えて、公立ブラジル人学校設立さえ、検討され、特区の申請さえ行われようとしています。

 


 大学が関わる改善のポイント
 このような状況の中で、大学が関わる改善のポイントは何だろうか。
現在、学校現場の改善ということで、大学が関わってよく行われるのは、現場の授業研究への協力、大胆な単発的実践を企画して学校に持ち込んで実施してみること、あるいは大学教員の個人的な関わりで、授業の改善を考えてみる、というようなことです。
しかし、外国人の子供の教育に関しては、そのようなやり方では、必ずしも有効といえないと我々は考えます。

 そこで、我々のグループが注目したのが教育実習という訳です。
教育実習は、現在の制度の上で国立大学の教員養成学部が小中学校の学校現場にきちんと関われる方法だからです。
教育実習という場を利用して、大学が現場の問題に取組むということがいいのではないかと、我々は考えました。
しかし、最初から教育実習を実施しようといっても、それはそう簡単ではありません。
そもそも最初は教育実習に向うという方向性もなかったのですが、今から振りかえれば、フレンドシップからインターンシップへ、そして教育実習へという流れで進行しています。

 これまでに、群馬大学では色々な取組みがなされてきましたが、それらを振りかえってみると、我々のグループが行おうとしている企画は、次のような流れに乗っていると思います。
必ずしも、我々のグループのメンバーが行ってきたものばかりではありませんが、流れの概要を紹介します。

 (1) まず、公開シンポジウムを行ないました。
毎年1回開催している学校教育臨床総合センター主催の公開シンポジウム(但し、当時は教育実践研究指導センター)で、このテーマが取上げられました。

○平成8年12月に「異文化時代の学校」(第7回)
○平成11年4月に「日本語を教える―国際化する義務教育の現場」(第9回)。
この時は、大泉町から井上京子先生に来て頂き、学校現場で具体的に取組まれていることを丁寧に紹介していただきました。

(2) それから、群馬大学教育学部教官を中心にした研究プロジェクトも行ってきました。

○群馬大学教育方法改善プロジェクト経費(平成10年度)
 「国際理解教育による教員養成カリキュラム開発のための基盤調査」(平成10年)
 ○平成11-13年度科学研究費補助金
「群馬県太田・大泉の小中学校国際化の実態と求められる教員資質の総合的研究」
(代表者:所澤潤、分担者17名、内、他大学6名)。
このプロジェクトが今回の科研に直接につながっています。
 ○平成15-17年度科学研究費補助金
「地域の国際化による日系南米人増加の実態をふまえた教員養成システム導入のための研究」
(代表者:所澤潤、分担者20名、内、他大学9名)。(平成15年12月から代表者は古屋健に変更)
最初の方の科研費の研究は実態調査ということだったのですが、
実態をいくら調査しても現実が変わるわけではないので、我々の取組みとしてはよくないのではないか、と考えるに至り、
今年度採択されたこちらの方の科研では、もう少し現実を改善する方向を探したいと考えています。
その考えが「教育実習」を糸口とすることへと繋がりました。

(3) さらに教員養成学部フレンドシップ事業でも外国人の子供の教育をとりあげています。
この問題に取組み始めた頃、フレンドシップ事業が文部省(当時)ではじまりました。
それまで、教員養成学部は現場との関わりは、教育実習以外にほとんどなくて、学部教育が教員養成になっていないのではないかという話になってきました。
教育実習以外に学校現場にもっと触れる機会を作らなくてはいけないということで、予算化されたものです。

 外国人の子供の教育を取上げたものは、平成11年度から実施しています。
平成12年度から学部の「体験的学習」という教科の枠に入れ、選択必修化し、原則として2年次での受講に改めました。
実際に学生が学校現場に入った時にどうなるかということを、少しずつ経験を積み重ねて調べてきました。

 そして、今年度(平成15年度)からインターンシップ化し、受講者も、原則として教育実習を修了した4年次生に切換えました。
今年は太田市立韮川小学校と境町立東小学校とブラジル人学校ピタゴラスでインターンシップや実習授業を行なっています。

 体験の場は以下のとおりでした。

11年度 太田市立宝泉東小学校 
12年度 太田市立旭小学校
13年度 太田市立旭小学校、及びピタゴラス
14年度 太田市立韮川小学校、境町立東小学校、及びピタゴラス
15年度 太田市立韮川小学校、境町立東小学校、及びピタゴラス

 なお、去年くらいから教育学部の中でインターンシップが大きな話題になっていて、今年度から附属学校でインターンシップが行われています。
それはこの授業とは、一応別の筋で行われているもので、実験的実施のため、修了しても学生は単位を習得できません。
学部の学生が数十名参加し、学校現場に1週間単位や長期にわたって入っています。

 付け加えると、フレンドシップを始めてから、教育学部と外国人学校の交流が生れつつあります。
ブラジル人学校・パラレロの生徒が昨年秋に、ブラジル人学校・ピタゴラスの生徒が今年6月に、教員の引率で群馬大学教育学部を参観に来訪しました。
ピタゴラス、パラレロの生徒の中には日本の大学に進学できることを期待している生徒達がいて、日本の大学に非常に関心を持っています。
今年の9月に文部省令が改正され、大学入学資格の検定試験を受けずに国立大学へ進学することも法令上は可能になってきています。
私立大学はすでに開放しているところも多いのですが、国立大学は来年度の入学から状況が変わって、事実上、開放されることになります。


 教育実践とフレンドシップ、インターンシップの様子
 フレンドシップ、インターンシップの様子を紹介します。
今年度は10月中旬から、太田市立韮川小学校と境町立東小学校でインターンシップをはじめて、韮川小学校は今週(11月の最終週)で終了。
境町立東小学校では、3人のうち1人は今週で終了、残りの2人の学生は学校とうまく噛みあって12月の末まで延長となりました。

(ビデオ)

1) 小学校2年生で日本人児童にポルトガル語を学ぶ機会を設けた平成10年度の実践。
今日はお見せする時間がありませんので、ビデオは省略しますが、
前回の科研費の報告書に掲載されていますので、参考にしてください。
(2) 小学校6年生の「ブラジルの言葉でブラジル料理を作ろう」
指導助手の先生と日系人の子供が、ポルトガル語で日本人の子供たちに指導して、
日本人の子供達が言葉はわからないのですが、身振り手振りをとおして理解しながら料理をします。
群馬大学の学生は参加して言葉がわからないままにお手伝いをしています。
最初の年に行った実践ですが、その年はかなり大掛かりに行えました。
さまざまな条件がそろって実施できたものです。
 最初の年はこのように大がかりなことができたのですが、以後は、
学生が現場で自分達が企画した授業を行ったり、現場の授業を手伝うといものが増えています。


(ビデオ)

〈ピタゴラス〉
(1) ピタゴラスの教室です。日本語とポルトガル語のカードを作ってゲームをしている。
〈境町立東小学校、昨年度〉
(2) 理科専攻の学生が、酸性とアルカリ性を教える実験の授業をしています。
〈ピタゴラス〉
(3) 英語専攻の学生。
学生は日本語指導法の授業を受けていないため、
自分たちのことを無意識に「うちら」と言ってしまっても、それがまずいことだと気づいていない。
〈太田市立韮川小学校、今年度〉
(4) コンピュータの授業。学生を参観に連れて行ったのですが、
この授業は人手が足りなくて参観の学生が手伝う状態です。
〈パラレロ〉
(5) 昨年度、パラレロの子供たちが群馬大学に来て美術の授業を参観しているところです。

 多くの学生は、受講前には外国人の子どもの教育に関する基礎的な知識が全くありません。
そこで、連れて行く前に予備教育をする必要があります。
昨年度まで、次のようなメニューを用意しましたが、今年度はインターンシップ型にするということで予備教育の時間を減らし、以下のうち、(1) 、(2) 、(3) の内容だけを行っています。

 (1) 小学生向け日本語教育
 (2) コミュニケーションを中心とした日本語教育
 (3) 一般的な成人を対象にした日本語教育
 (4) 外国人子女の社会的背景
 (5) 前橋市、桐生市等の国際交流協会主催の日本語教室の参観
 (6) 群馬大学留学生センターの日本語教室参観


 参加学生の感想から
 平成12年度に、受講した学生ではなく、協力した4年生の学生が、何ヶ月かにわたって学校を訪問した後にこのようなことを言っていました。
この地域に小さい頃から住んでいる学生でしたが、

今まで、電車に乗っている日系人に出会うとなんとなく嫌な感がした。
ところが外国人子女教室に出入りして外国人の子供に接していたら、電車で日系人がいても全く気にならなくなった。
自分でもその変化に驚いている。

というようなことを言っていました。
学生時代に外国人の子供の教育に関わる体験の教育効果の大きさを表していると思います。


 必要とされる教員資質
 以上に紹介してきた経験の過程で、我々のグループの中で色々話している間に、以下のような教員資質が必要ではないかと考えるに至っています。
厳密に根拠が示せるというわけではないのですが、浮かび上がってきた点は5つです。
日本語教育担当以外の教員に必要だと思われる資質も含まれています。

(1) 外国人児童生徒がいる教育環境をわくわくする創造的魅力的なものだと感じていること。
(2) 日本語教育担当教諭や外国人指導助手の仕事を魅力的で価値のあることだと理解していること。
(3) 日本語教育担当教諭や外国人指導助手に対して開放的に接し、かつ協力的であること。
(4) 異文化との接触、外国人の父母との交流、対外的な交渉などに興味を持ち、労を厭わず積極的な姿勢を持っていること。
(5) 特別に外国人児童生徒を受け持っていない場合でも、外国人児童生徒に日本人児童生徒と同等に接することができること。

 以上の5つを、重要だと判断していますので、そのような資質をどのようにして、群馬大学の学生につけさせるか、ということが我々の課題だと考えています。


 外国人の子供の教育として我々の目指す方向(学校教育の基本的なありかたとして)
 この十何年かの経験を歴史的に眺めてみると、外国人の子供の教育として次のような4段階が考えられるように思われます。

第1段階
 
子供とのコミュニケーションの改善。
母語のできる指導助手を雇うというようなことが行われました。


 しかし、これだけでは不十分なのではないかということで、第2段階があります。

第2段階
 
日本語教育の充実。
日本語教室、外国人子女教室が設置され、教材開発も積極的に行われる。

この段階は、2、3年前まで続いてきた状況ですが、さらに、母語教育を充実させなければならない、ということに話が進んできました。
そして、第3段階が始まりました。

第3段階 母語の教育の充実。

現在、全国で行われていることの先端です。
阪大院生の根岸(親)さんが太田市で試みているわけですが、この母語の教育の充実という点からも、また、どのような成果が出てくるのかということからも全国的に注目を集めています。

第4段階
 
日本人の子供の側を変える。
日本人の子供にポルトガル語等の学習をさせる。

つまり、外国人の子供を適応させるだけではなく、日本人の子供の側をもう少し変えたほうがいいのではないか、ということです。

 第4段階が我々のグループが模索している方向です。
外国人に対する日本人の側の理解をもうちょっと高めるという教育にまで進んでいくと、実は、外国人が日本語を学ぶような機会が増え、全体のレベルも上がってくるのではないか、ということも予想しています。


 システム構築の戦略 
 外国人の子供の存在を前提とした教員養成システムを構築するために、我々のグループがとっている戦略は、

(1) 教育実習の実施

(2) インターンシップの実施

とを並行させるということです。
両者を重ねることで学部全体のパワーを向上させられるのではないかと考えています。
教育実習は平成17年度実施を目指しています。

 教育実習の実施には、実施校だけでなく、県教委、市町村教委との調整も必要ですが、その打合せの機会を利用して、来年度には県教委と合同で、研修プログラムを立ち上げ、我々の側も情報を得るとともに、学校現場の向上にも寄与したいと考えています。
そして、その研修には、ピタゴラス等、教育委員会管轄外の教員参加できるような開放性を持たせたいと考えています。

 インターンシップを並行させるという発想は、すでにインターンシップという制度が教員養成においても動き始め、それを無視できないということも大きな理由ですが、もう一つの理由は、大学の教育を考えた場合、教育学を専門的に勉強していて外国人の子供の教育を積極的に学ぼうという学生だけではなく、教育学部には数学、音楽、美術を専門的に勉強したいという学生もいるということです。
外国人の子供について学ぼうという学生については、教育実習をはじめ色々な機会を提供する一方で、他の専攻の学生にも群馬県東部地域の現場の様子を知ってもらいたいと考えている。
その場合にインターンシップという方法は有効なのではないかと考えています。

 今年の場合は、インターンシップを初めて実施してみました。現場との調整もかなりたいへんで、4月から話をしながら進めて、10月の第3週から6週間をめどに11月の末まで実施しています。
実際のやり方がどうなっているかを、簡単に紹介します。

 韮川小学校では、外国人の子供を全部集めての指導の時間がありますので、日本語担当の先生が受持っているその時間に入らせてもらって、先生の補助を行うという形になりました。
境町の東小学校では、外国人の子供を全部1クラスに集めるという授業がなく、取り出しで授業が毎週何回かあるというだけですので、群馬大学学生は普通学級の中に入って、特に外国人の子供のTTを行う、補助を行うという形で6週間が始まりました。
そして途中で補助の方のTTではなく、「主」の方の担当に切換えるということになり、11月の最後の2週間は「主」の方を行いました。

 以上のほかに学生の企画した授業も1時間ずつ行わせてもらいました。
というのは、各校の場所が群馬大学からかなり遠いので、特に2年生の受講生が毎週通えないからです。
そうした学生にも機会を与えるため、学生企画の持込み授業を考えました。
昨日(11月25日)までに、境町立東小学校と太田市立韮川小学校とピタゴラスでこの授業を行ない、終了しました。
企画した授業は、粘土消しゴムを使い、子供の創意工夫に任せて人形などを作らせながら日本語を学習したり、あるいは日本人の子供にはポルトガル語を教えたりするというような内容でした。

 戦略の方向は、国際教育専攻(仮称)を新設し、それを中核として学部全体を改編していくというものです。
現行教員養成制度の枠内で、実現可能な、有効なものとしてそのようなものを考えたわけです。
新専攻を学部内に設けることができれば、関連授業を数多く開講でき、多くの学生が関連科目を受講できるようになるからです。
企画を構想し始めた頃に、埼玉大学との統合が話題になっていたことも影響しています。
教育実習を行なう一方で、インターンシップを利用しながら、国際教育専攻(仮称)を立ち上げようと、学部全体で外国人の子供に取組む条件を作ろうと考えたわけです。
これまで、進めてきた流れは以上のようなものです。

付記 本科研ホームページ:http://www.edu.gunma-u.ac.jp/~furuya/kaken/index.html


質疑応答の要点

古屋 おおまかな流れは、最初フレンドシップの授業という形で行っていたものが、次第に本格化してインターンシップへ教育実習へと展開し、現在はインターンシップとしてはじまったところだといえる。
インターンシップと教育実習の具体的な違いは?

所澤 今回構想している教育実習は、教育職員免許法で必修とされている教育実習ではなくて、その上に載せる選択科目としての教育実習である。
群馬大学の学生は3年生で全員教育実習を受けることになっていて、それを修了して4年生になってさらに特設の教育実習を行うということを考えている。
特設の教育実習には、現在、幼稚園教育実習と養護学校の教育実習(障害児教育)の2つがあるほか、高等学校の教育実習が実施可能である。
それらと同様の位置づけで、外国人の子供の教育実習というのを加えようと考えている。
期間としては3週間くらい。
正味15日くらいで、形式的には3年生で行っている教育実習に似たような形のものとなるだろうが、現場の指導体制の関係があるので、これから教育委員会や各校と相談したい。

 インターンシップの方は、全国的に行われているが、学校ではなく会社への派遣のインターンシップが主導的な役割をしている。
経済学部などで行われているインターンシップを真似して教育学部でもインターンシップを行ってはどうかという動きになっている。
企業への派遣の場合、体のいい無給のアルバイトというような疑問も出ているが、学校現場はお金を稼ぐという場ではないので、同じインターンシップという名称を使っても、かなり性格の違うものになりそうである。
教育学部では全国的に昨年、今年くらいから行なわれているので、インターンシップ自体がどのように展開していくかは予想がつきにくい。
どちらかというと、お手伝いという形で学校に入っていくので、学校の側では指導計画を練ったりということはしないという形が多い。

古屋 新しい試みなので定まっていない部分はたくさんある。教育実習の内容自体もこれから考えていかなければならないものである。