境町立東小学校における授業反省会
2004年4月29日掲示開始(ver1)
場所:校長室
| 出席者 |
大橋校長
佐藤康教諭(最後の頃に退席)
佐藤久恵(高崎芸術短期大学非常勤講師)
所澤潤(司会・引率者・群馬大学教育学部教授)
授業者(4年)
学生(最初だけ参加)
院生D(現職教員)
院生E
学生A(4年)
学生B(2年)
学生C(2年)
Y(慶応義塾大学院生)
S(慶応義塾大学院生) |
授業者(4年)
・授業をやっていて楽しかった。突っ走ってやった。
・地球儀を用意したらどうかという話を受けた。ブラジルの説明をするための地球儀を用意していなかったことなど抜けていたことに気づいていなかった。
・今は、終わったか、という気持ちだ。
所澤
・「粘土消しゴム」を使用しようという案は学生A(4年・韮川小インターン)さんが出した。ここでの授業の前に、学生A(4年・韮川インターン)さんが韮川小学校で、学生B(2年)くん、学生C(2年)くんがピタゴラスでそれぞれ授業の試みをしている。
学生B(2年)(ピタゴラスで授業担当)
・自分のピタゴラスでの経験と比較して、今日の授業は日本語で授業ができるのが大きい。つまり、先生の意図が子どもに通じやすいのではないか。ピタゴラスでは日本語が通じなかった。
・自分の時はサンバの写真も用意していなかったし、挨拶も自分は扱わなかった。それらのもの(写真や挨拶)が加わっていた。
学生C(2年)(ピタゴラスで授業担当)
・自分も学生B(2年)と同様に感じた。日本語を使えると子ども達を集中させやすい。日本語が通じると高いものを望めると感じた。ブラジルの子どもにはなんとなく通じているという感じだったが、日本人の子どもにははっきりと通じていると感じた。日本人の子どもを指導すると「わかっている」「わかっていない」ということがはっきりする。
所澤
・今日は伝わっていたと思うか?
学生C(2年)(つづき)
・個々の子どもに対してどのくらい支援してよいのか、そのことがわかりにくい。今日はもう少し関わってもよかったのではないか。
所澤
・アイデアを出した者としてどうか?
学生A(4年・韮川小インターン)
・参考作品として示した粘土消しゴムがよかった。かつらがとれたり、作った卵に黄身が入っていたりするのを見せられたのがよかった。
・フラッシュカードの使い方に工夫があった。「ゆでる」などの単語をちらちらと見せるなどちょっとわざとらしくやっていたのがうまかった。(フラッシュカードが見えているけれど見せてないような態度に対して)
・子ども達がポルトガル語の単語の綴りが読めないのが気になった。
所澤
・ピタゴラスの子ども達に授業をしたこととの違いをどのように思うか?
授業者
・みんなからとても誉めていただいたと思う。
・子どもがみな日本人で、日本語しかわからない子どもばかりだったので、授業の組み立て(授業の作り方)が難しかった。
・色の単語を子どもに言わせた方がよかったように思う。
・細い消しゴムを作っている子どもがいたが、折れる(接着部分が小さいと取れる)などして消しゴムとしてうまく使えないので、あらかじめ注意した方がよかった。
大橋校長
・完成したあと、消しゴムとして使うことを意識させておけば、細い消しゴムを作る子はいなかっただろう。
所澤
・確かにあらかじめ注意しておけばそれは防げたと思う。もちろん、子どもにはうまく作れなかったという体験も価値がある、という考えもあるだろうが。
院生D(現職教員)
・今日の授業は、前回の学生A(4年・韮川インターン)さんの授業と比べて、言葉に重点を置くか、粘土に重点を置くかが定めにくく、難しかったと思う。前半は粘土、後半は単語の指導になっていて、つながりが明瞭でなかった。「言葉」と「ねんど」の関わりの難しさと同時に普通学級の中に持ち込む難しさを感じた。
・発音については指導助手の先生に手伝って貰い、子どもに口に出させないといけないと思う。(アシスタントの人に頼むなどの工夫が必要)
・子ども自身の言葉の興味は別な学校でやった授業より高いのではないか。
所澤
・ブラジル人のN君が欠席し、授業者はリズムが狂ったようだ(ブラジル人はこのクラスには1名しかいない)。
・日本人の子ども達もすでにポルトガル語の単語をかなり知っているのではないか。そのことをふまえて授業を組立てた方がよかったように思う。
院生E
・子どもの反応がよかった。最後の20分は興味のある子が多かった。
・おはようという挨拶の単語(ボンジア)が子ども(今日は日本人だけ)からすぐ出てきたのが意外だった。自分が予想していたよりも子ども達が単語を知っていた。
・粘土と外国語がうまく組み合わさっていなかった。
授業者
・ポルトガル語を重視したいと思ったが、予定していたよりも流しすぎてしまった。
院生E
・自分としては今日の授業は大満足。流れがもたもたした部分もあったが、子どもに助けられていた。子どもからボンジアの言葉が出たのもよかった。
Y(慶応義塾大学大学院)
・粘土と言葉のつながりの作り方に疑問を感じた。ポルトガル語を「不思議な言葉」として取り上げたのは、主題への移行の仕方として唐突だと思う。
・ポルトガル語に対する子どもの反応がよいのが予想外だった。子どものポルトガル語に対する関心が高いと思う。「青」の意味の単語「アズール」に対して1度「ブルー」という単語が出たが、それ以外は英語が出てこなかった。自分が今まで接してきた地域の子ども達とは意識が違うと感じた。
S(慶應義塾大学大学院)
・自らのボランティア体験と比較して、授業の補助ではなく、今日のように主たる授業者として授業を行うのはたいへんだと思った。
・子どもがポルトガル語に慣れており、最初からポルトガル語という指導ができる。それをとりかかりにして初めてよいように思う。
・オブリガードとオブリガーダの違いを教えたら、男性形、女性形の違いがあるというような、日本語との違いを示せて、もっとよかったのではないか。
・ブラジル人同級生の使っている言葉を「不思議な言葉」と位置づけて授業を始めるのはよくないのではないか。ブラジル人同級生にとってはブラジルの言葉は決して不思議な言葉ではない。子どものポルトガル語に対する関心が高いのだから、「不思議な言葉」として始めず、最初からポルトガル語を学ぼうとして始めた方がよいのではないか。
所澤
・今日の授業で感じた点の一つが、一斉指導の技術の不足だった。前回の学生A(4年・韮川インターン)さんの時にも感じたが、全員の注意を自分や発言者に向かせて、クラス全体を動かすということがうまくできていない。
大橋校長
・一斉指導は、若い教員たちのウィークポイントでもある。3−40人の子供を1人の先生で指導するのだから、子どもにとって先生を30分の1にしてしまったら大変である。1対1に対応するのでは授業が成り立たない。
・一斉指導をすすめる中で、どの子どもとも1対1の関係を作れるというのが大切ではないか。
・今日の授業では、なんとなく始まって、なんとなく終わったような感じがしたが、それは一斉指導の経験不足と関係があると思う。
佐藤久恵(高崎芸術短期大学非常勤講師)
・一斉指導という点では、どこで個に接するかという問題がある。TTが入っているため、授業の中心が授業者からTTの方へずれてしまうことがある。最近の個別指導傾向の難点とも言えるのではないか。
・ひとりの子どもが、「ボンジア」のフラッシュカード(紫色で表示)を見て、「紫色」という意味じゃないかと言っていた。フラッシュカードに色をつけるのがよいかどうか。あのように推測させるがよいかどうか。
・挨拶の単語などは言わせてみたらよいと思う。これまでの授業で既出の単語を事前に調べて子どもが作っているものについても1つ1つそのたびに該当する単語を言わせて(小さいカードなどで教えて)みたらどうだろうか。
授業者
・紫色は間違えることを期待して意図的にやっていた。しかし打ち合せが十分でなかったため、指導助手の先生があそこで正解を言ってしまった。
・今日は子どもの反応がよくて、「ねらい」を達成しているような感じがし、それで自分でよしとしてしまっていたが、指摘を受けて多くのことに気づき、勉強になった。
(以上で、大体11時になった)
大橋校長
・授業の目的はどうだったか。粘土と言葉のどちらに軸足を置くか迷いを感じていて、それが授業の展開に現れていた。
・今日の授業の場合、言葉の方に軸足をおいていたようだ。しかし、子ども達はその目的をきちんとうけとっていただろうか。授業がどこに進むかを子ども達が理解していることが大切である。最初は、今日は粘土消しゴムを作ることと感じたのではないだろうか。
・黒板に今日の目的は何か、最初に明確に書いた方がよい。たとえば「お友達の国の言葉を知って仲良くしよう」など。
〈言葉に軸足を置いた場合〉
@材質は粘土。粘土は可塑的だが、できあがって消しゴムになると固いものになることを説明。材料がわかるように説明し、自由に形を変えられるものから固形のものに変わることを知らせる。
Aその次の段階で自由な発想に発展させる。
B粘土の配布にあたっては、「これは何色?」「これは日本語なら何?」「これはN君の国ではなんと言っているか、みんなで言ってみよう」というように進行しながら言葉の勉強ができるはずである。粘土も1本1本示して、それぞれに色を復唱しながら確認すればよく、また「こねる」などの言葉も、粘土にふれさせながら、教えればよい。粘土消しゴムを作りながら言葉を教わっていく。
C思い思いのイメージで消しゴムを作るが、「できあがったものは消しゴムとして使う」ことをあらかじめ押さえておくことが必要だろう。
D今日は、子ども達は創作意欲旺盛だった。教師1人が授業すると落後する子どもが出てくることもあるが、今日のようなTTが入っていると、通常落伍者は出にくい。興味が持ちにくいイメージのわかない子に対してや、創作意欲が落ちてきそうなときには、それを高めるために何かを工夫する。そうすると最後まで意欲的にいくのではないか。
所澤
・今回の授業は、考えてみれば、作業をしながら言語を学ぶという、新しい言語理論を実施したことになる。日本語についても文部科学省の『第二言語としての日本語』という手引きが同様の視点で作られている。学生がそのような視点を十分にとれなかったのは、群馬大学のカリキュラムの中にそのような考え方を教えるものがないのとも関係している。大学のカリキュラムの欠点が出たようだ。
大橋校長
・確かに、語学教育は従来の考え方と変わってきていると感じている。従来の方法で授業をしている場合、ALTの人たちは日本で自分たちはレコードプレイヤーではないか、という気持ちをもっていることがある。我が校では、そのようにならないように、ALTにはゲームを通して言語を身につけるような方式の授業をお願いしている。
所澤
・佐藤康先生が授業の最後に、「今日の授業をきっかけにブラジルの言葉を覚えていこう」と子どもたちに話していたことが興味深かった。きっかけがあれば、そのような積極的な取組みに向えるということだと思う。大学から我々の様な者たちが来て、外部で考えたことを試行してみる機会がそのようなきっかけになるというのであれば、我々が現場に来ることが、現場にとっても1つのプラスになるということなのではないかと感じた。
授業者
・ お礼の言葉
大学引率者(所澤)による補足
授業の検討会は、授業の仕方を学ぶ者にとってかなり実質的な意味を持つ指導の場となった。校長先生からのご指摘を整理すると以下のようなことになるのではないだろうか。
今日の授業の最大の問題点は、授業の構想において、
・授業の軸足(上記のメモを参照)を明確に定めていなかったこと、
である。それは言換えれば、
・この時間の目的が十分に明確になっていなかった。
ということであった。
そのために、授業の展開に難があった。
目的を明確にすれば、授業内容を明確にすることができ、それにともなって授業方法もより的確なものになったであろう。
この時間の目的が明確になっている上で、目的を意識していれば、自ずとすぐれた授業が生れるはずであろう。
ではそれを実現するために、授業を準備する段階で何をしなければならないか、というと、
・教材研究をしっかりやる
ということである。
そして、授業の目的が明確になっていれば、
・授業の入り口で、子どもに今日の授業の目的がよくわかるように、もう少し工夫ができただろう。
但し、校長先生は、今日の授業は、中盤からあと、子ども達の創作への関心が高まって、子ども達は満足していたと捉えられていた。
この地域においては、「総合的な学習」の時間に「国際理解」をテーマとする場合、
・日本の子供もブラジルの子どもも相手の母国語を知って、挨拶ぐらいできるようにする。
・ブラジルの子ども達は日本のことを知りながら、ブラジルのことも知ったほうがいい。
というのが、ブラジルの子どもの教育に関わっている教員達の実感である。
そうした観点を含めて、今日の授業を総評すると、
・日本の子どもにもブラジルの子どもにもよい企画だった。
・子どもが満足できており、子どもの気持ちを引っ張り出したことがとてもよかった。
ということであった。
引率者の目から改めて以上の諸点を考えてみると、それらには、普通学級における日系人児童の教育の難しさと面白さが現れているといえる。
すなわち、日本人児童と日系人児童を教室における対等の存在と位置づけ、なおかつ上記で述べられているような軸足を定める、というところに、授業を作っていく上での難しさとまた面白さの1つがあるということだろう。