1998年GPS観測_海洋潮汐荷重
<<海洋潮汐荷重による変形がGPS可降水量に与える影響について>>
0.結論
Bernese4.2では海洋潮汐荷重の効果を考慮した計算をしてくれないらしい.そこで,Shoji et al. (2000) の補正式を用いて,1998年のデータについて後処理で補正が出来ないか検討してみた.その結果,二つの結論を得た;
1)海洋潮汐荷重の補正しても他の要因による誤差が大きく,1998年のデータでは補正の効果は確かめられない.
2)GOTIC2で計算した海洋潮汐荷重による変位とGPS可降水量を比較すると,大きな正の変位が生じている時間にGPS可降水量が1-3 mm急増するすることが頻繁に認められた.
1.Shoji et al. (2000) の結果から導き出される補正式
Beutler et al. (1988)は3cmの鉛直方向の測位誤差は約1cmの大気遅延の推定誤差を生じうることを理論的に示し,Shoji et al. (2000)は二つの誤差の関係について,次の補正式を得ている.
GPS可降水量への誤差=鉛直変位*0.27* Π ----(1)
前橋においても,海洋潮汐加重の影響が大きな時には,数時間で全振幅30mmの鉛直方向の変動が認められる.Π=0.16とすれば,可降水量にして1.5 mm 程度の推定誤差に対応する.
2.GOTIC2 による海洋潮汐荷重による変位の計算
国立天文台の松本さんが開発したGOTIC2を使うと,緯度・経度・標高と時間を指定すれば,固体地球潮汐による変形と海洋潮汐荷重による変形を計算してくれる.海洋潮汐荷重による変形の計算に必要な時間は,PenIII 750MHz のDOS/V 機で,1地点あたり約4分である.
第3図に,群馬大学と輪島における海洋潮汐荷重による鉛直変位の時系列を示してある.数地点の鉛直変位を比較すると,東大学がGPS可降水量のデータセットを作る南東北〜西中部域ならば,領域によっては振幅に最大で10 mm 程度の差異があるが,位相は殆ど同じと見なしてよい.
3.1998年についての検討
Iwasaki et al. (2000) で,GPS可降水量に与える水蒸気勾配の影響を議論した時に利用したデータを使った.但し,雲水量の影響を最小限に抑えるために,雲水量が0.005 cm 未満のデータのみを使用した.マイクロ波放射計による可降水量と通常の方法で求めたGPS可降水量は対応が非常に良く,相関係数0.998,RMSは2.* mm である.
マイクロ波放射計による可降水量を真値と見なし,マイクロ波可降水量とGPS可降水量の差(GPS-WVR)を観測誤差と考え,この観測誤差と海洋潮汐荷重による鉛直変位を比較する.
3.1:GPS-WVR と海洋潮汐荷重による鉛直変位の関係---その1:分散図---(Fig.1)
第1図に示すように,GPS-WVR と海洋潮汐荷重による鉛直変位には有意な相関は認められない.式(1)による補正を行っても,このデータについては,補正式(1)の有効性を示すことができないことを意味する.
但し,Beutler et al. (1988)の理論的考察やShoji et al. (2000) の解析的考察からも分かるように,補正式(1)を使えば,ある程度はGPS可降水量の精度が向上することが期待できる.
3.2:GPS-WVR と海洋潮汐荷重による鉛直変位の関係---その2:時系列---(Fig.2)
第2図に,洋潮汐荷重による鉛直変位とGPS可降水量の誤差(GPS_PW - WVR_PW)の時系列を示す.第1図からも分かるように,長い時間スケールで見ると鉛直変位とGPS可降水量の誤差には明瞭な対応は見られない.しかし,短い時間スケールでは,両者に二つの対応関係が認められる.
1つ目は,GPS可降水量の誤差が-2mm以下の8事例のうち7事例は鉛直変位が負の期間に認められることである.この-2mmという誤差は,Beutler et al. (1988)やShoji et al. (2000)から期待される観測誤差に比べて5-10倍大きな値である.2つ目は,短い時間間隔では鉛直変位と誤差の時間変化の対応が良いことである(DOY=215, 217, 219, 229).但し,相関係数が0.7以上の各期間について近似式を求めても,y軸切片の値も傾きも期間によって大きく異なっている.海洋潮汐荷重による誤差は,補正式(1)だけでは充分に補正できないことを意味するのかも知れない.
4.GPS可降水量の短時間変動と海洋潮汐荷重による鉛直変位
南東北〜中部地方(約300km*300km)にかけての約300地点の国土地理院GPS観測網のデータから,GPS観測点の設置密度を考慮に入れて領域平均したGPS可降水量の時間変化を求めた(第3図の折れ線グラフ).このGPS可降水量の時系列を見ると,2-4時間でGPS可降水量が2-4mm増加することが頻繁に認められる.GOTIC2で求めた前橋(赤線)と輪島(青線)の海洋潮汐荷重による鉛直変位の時系列と比較すると,↓で示したGPS可降水量の急増は,鉛直変位の極大と非常によく時間が一致している.これらの事例のほとんどにおいて,解析領域全体でGPS可降水量が同時に増加しているため,海洋潮汐荷重による鉛直変位の影響による可能性が考えられる.
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