Date: Wed, 16 Aug 2000 18:10:02 +0900
To: hayakawa@edu.gunma-u.ac.jp
From: Masashi TSUKUI <mtsukui@earth.s.chiba-u.ac.jp>
Subject: 三宅島のコメント,海岸部の集落に30〜300cm降るの根拠は?
つくいです.
三宅島の過去の噴火を調べた立場からのコメントと質問です.
今回の事件はマグマの噴出が(ほとんどあるいは全く)ないのに山頂部の大きな陥没
ができたという点で極めて異例の事件ということができます.私の知る限り,三宅島
の過去1万年間にはないできごとです.
9世紀(AD850年ころ)や1763-69年の噴火ではみかけ上1億m3をこえる噴出物がありま
した(それぞれ割れ目噴火をしていますので貫入した分を加えるとさらに大量のマグ
マが移動したことになります)が,山頂の陥没は起きていません.直径1.8km×
1.6kmの八丁平カルデラができたのは2500年前ころで,このときの噴火は見かけの噴
出量が,7億5千万m3でした.今回の陥没量は(間もなく)これにほぼ匹敵する量であ
り,5億〜10億m3を超えるマグマが岩脈として(西へ10kmもしくは新島,式根島ま
で?)移動したと考えないと説明できないと思われます.これが地表に噴出しなかっ
たのはむしろ幸運だったともいえます.
八丁平の噴火では,
1.マグマの噴出量が多かった(スコリアとして4億m3出た),
2.化学分析の結果から,それ以前とは異なる未分化な新たなマグマが相当量参加し
たらしいこと,
3.八丁平噴火の後に大きな間隙をおかず(おそらく<<100年)に次のスコリア噴火が
始まったこと
など,マグマの頭位が相当高い位置に保たれていたと想像できます.しかし,今回の
事件では,マグマの圧力自体は高くはなく,周囲の応力場が貫入を促すような状況に
あり(−だからこそマグマの噴出はほとんどなかった),マグマ本体はもはや随分低
い位置にあると考えています.火口の地形は八丁平のカルデラ形成後に似ています
が,マグマの位置は今のところ当時とは違うという認識です.したがって,早川さん
の考えてらっしゃる”海岸部の集落には,火山灰が「30〜300cm積もるでしょう」”
という発言に対しては懐疑的で,どのような根拠に基づいたものか教えて下さい.八
丁平カルデラ形成後1000年間の噴火ではスコリアは発泡が悪く,また噴火の後〜末期
に細粒火山灰(”カタ”)を出すようなマグマ水蒸気爆発を繰り返しましたが,環状
林道で最大40cm,都道一周道路で最大20cm程度,しかし,こんなに降るかなあ.まし
て海岸部の集落に30〜300cmはあまりに過大のように思う.
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津久井雅志
千葉大学理学部地球科学科