Date: Sun, 13 Aug 2000 11:44:44 +0900
To: "山本" <headrock@d2.dion.ne.jp>
From: Yukio Hayakawa <hayakawa@edu.gunma-u.ac.jp>
Subject: Re:

山本さん,

メールありがとうございます.

At 22:04 +0900 00.8.12, 山本 wrote:
>坪田中学校の理科の教師の山本といいます。早速ですが、今回の噴火活動についてお伺
>いしたいと思います。
> 私は自作の地震計(速度計)を学校に設置し、ここ1週間以上観測を続けていますが、
>そこで気がついたこと等をまじえ質問します。
>◎地震が1つのシリーズになっていて、初動が引きで始まることの多い、島直下のもの
>と思われる地震が数分起きに数時間ないし、十数時間発生し、最後にその中でも振幅の
>大きい、振動の時間の長い地震が発生すると、しばらくの間(数時間から十数時間)こ
>の地震がおさまります。そして、これらの地震の前後に、サインカーブをえがく、周期
>1.2秒程度の振動が見られます。
> このシリーズの地震はしばらく続いていましたが、今月10日の噴火前は回数も少な
>くなり、振幅のレベルも小さくなくなっていました。
> また、噴火後は、上記のようなシリーズの地震がしばらく続きましたが、2日たった
>今日現在サインカーブの振動や直下の地震はとても少なくなっています。

上記の山本さん自身の観察は,気象庁その他の機関の観測データとまったくよく一致
します.おそらく簡便な地震計だろうに,これだけ現象を正確に把握なさっているこ
とにおどろきます.

気象庁その他の機関の観測データは,

気象庁のページ
http://www.kishou.go.jp/index_main.html

東大地震研究所のページ
http://www.eri.u-tokyo.ac.jp/topics/MIYAKE/index.shtml

などで公開されています.比較してみるとよいと思います.

自作の地震計でこれだけのことがわかるというよい事例ですので,研究報告としてお
まとめになることを勧めます.

> そこで質問ですが。
>
>@上記地震は、マグマだまりへの地盤の崩落と考えて良いか。

そうかもしれませんが,そうでないかもしれません.よくわかりません.マグマだま
りがどの深さにあって,どれくらい大きいのかわかりません.

>Aこれらの地震の回数や、振動のレベルが下がってきていたのに10日に噴火したのは
>なぜか。

噴火が,いま三宅島で進行中の地学現象の本質ではないからだと思います.これまで
3回の噴火はおまけとしてついでに起こったものだと思います.本質は,山頂火口の
陥没です.それを引き起こしている地下のシステムです.しかし地下のシステムの実
体像はつかめていません.8.10噴火でその地下システムが壊れたことはないようです
.それ以前と同じことをいまも繰り返しています.

>B今回の台風の雨は、今後の噴火活動にどのような影響を与えるか。

まあ,噴火をうながすかもしれません.ただし,前3回の噴火がことの本質ではなか
ったことに注目してください.

>C今後の噴火活動はどのように推移すると考えられるか。

7.16に公開した私の予測
http://www.edu.gunma-u.ac.jp/~hayakawa/news/2000/miyake/remarks/scenario/
index.html

を変更する新しい条件はないようです.8.10に3回目の噴火があったことから,私の
7.16予測が的中しつつあると考えています.

>Dもし、山頂での大規模の噴火(サージを伴うマグマ水蒸気爆発など)が起こるとした
>ら、どのような前兆現象が起こると考えられるか。

サージを伴うマグマ水蒸気爆発は,かならずしも大規模噴火ではありません.それら
は,爆発力が強い噴火です.単位で言えば kg/sが大きい噴火です.大規模噴火とは
,噴出量(kg)が大きい噴火を言います.

刻々と変化するいまの山頂火口の状態を見ると,ほとんど前兆なく,それらが起こっ
ても不思議ではありません.

>Eもし、Dの現象が起こってしまったときは、個々の身を守るために、どのような避難
>行動をとればよいか。

それが起こってしまったら,避難する時間があるとは思いにくい.

それが起こる確率を見積もることはたいへんむずかしいが,たとえばこれから24時間
以内にそれが起こる確率は0.1%以下だろうと思います.これから1カ月の確率は1%を
超えるのではないかと思います.

このような,低確率事象だがいったん起これば致命的な危険に対処すべき方法は,ま
だ確立されていません.

私は,島の高校生以下の子どもたちは夏休み期間中は島外に疎開させるのが適当だと
,夏休みが始まった7.20に考えました.

9月から始まる新学期をどうむかえるか,いまのうちによく考えておくのがよいと思
います.三宅島の危険は,山頂火口の陥没が停止するまで続くとお考えください.過
去3回のような火山灰降下とそれにともなう泥流などの危険はこれとは別次元の問題
です.

>F泥流についての対策はどうすればよいか。

降灰がなかった地域での泥流対策は,これまでどおりでけっこうです.
降灰があった島の北東部は,これから数年は泥流の心配が必要です.この心配を軽減
するために建設省などが手当することがのぞまれます.

>
> まだまだ、ご質問したいことがあるのですが、もし、時間がありましたら、回答の方
>宜しくお願い申しあげます。

何度でも質問してください.
できるだけすみやかにお答えします.

> 坪田中学校から、同じ内容のメールを送りましたが、重複しましたら申し訳ありませ
>ん。

いいえ,一通しか届いていません.

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早川由紀夫