工場の煙突モデル

きのう(10.28)のTBS報道特集で,火山ガスが島の海岸集落を襲うシナリオを二つとりあげていました.

1)10m/s以上の強風が吹く場合
2)上空大気に逆転層がある場合

これに,

3)風が弱くて大気混合があまり進まない場合

を加えたいとわたしは思います.

二酸化硫黄ガスは大気より重い(密度が大きい).したがって,大気と混合しない場合は,山肌を下る.窪地に滞留する.1997年にあいついで起きた八甲田山と安達太良山の事故はこの種のものでした.八甲田は二酸化炭素.安達太良は硫化水素.

同じ温度で比べて重くても,高温であれば火山ガスは周囲の冷たい大気より軽くなります.そのために浮力が発生して,三宅島山頂の上に高さ1000メートルくらいの火山ガスの白い柱が形成されます.これがちょうど工場の煙突の役目を果たし,足もとの集落に高濃度が発生しないしくみになっています.

しかし今年になって,火山ガスの放出量が減少したと言われています.もしこれが本当なら,高温で地表に噴出した火山ガスはすみやかに冷却して白い柱を高く上げることができなくなります.高い空で拡散することなく,深さ400メートルのカルデラ内に滞留して,その大きなくぼみを有毒ガスが満たすことになります.風が弱くて大気混合が進まないときに,これが実現します.

1000メートルあったはずの工場の煙突がいきなりゼロになるのだからたまりません.高濃度の有毒ガスが近くの民家を直接おそいます.海岸集落にとっては,火山ガスの放出量が大きいときより,それが減少したときのほうがむしろ危険が大きい可能性があります.つまり三宅島島内への火山ガスの危険はこれからが本番なのかもしれない.(この正否を確かめるにはモデル実験が役に立つだろう)

無風時に,カルデラ縁の切れ込みから有毒ガスが静かに溢れ出して山肌をくだり,高濃度のまま海岸集落を襲う危険が心配されます.

もっとも深い切れ込みは,神着の上にあります.

2001.10.29.0800