ある火山学者のひとりごと

5494. 2000年09月24日 18時35分48秒  投稿:Cauli. 
わたしはここで気象庁批判ばかりしていると思われるかもしれませんが、他の防災関係機関も気象庁の業務の限界をわきまえていない、言い換えれば、火山学を過信している点でよくないと思っています。しかし、気象庁はいま緊急火山情報を出さなければならない、という結論において、早川さんを支持します。

法律(運輸省設置法・気象業務法)は火山現象の予報を気象庁の業務としていません。すなわち、被害が出る前に「警報」(予報の一種)を出すことは気象庁の責務ではありません。気象予報や津波予報は気象庁の業務とされているのに対し、火山学は未成熟なため、火山現象の予報を気象庁の業務として法律に定めるのは時期尚早との判断でしょう。緊急火山情報に「警報に相当する」との冠をつけるのは、重要性を示す意味でわかりやすいかもしれないけれど、緊急火山情報は気象警報とは根本的に異なることを防災関係機関はわきまえるべきです。

しかし、活動火山対策特別措置法第21条に「国は、火山現象に関する観測及び研究の成果に基づき、火山現象による災害から国民の生命及び身体を保護するため必要があると認めるときは、火山現象に関する情報を関係都道府県知事に通報しなければならない」とあることを忘れてはなりません。確かに、これを気象庁の業務だと定めた明文規定はないけれど、これまでこの通報が気象庁が発表する緊急火山情報により行われてきたことは確立された慣習です。

8月18日及び29日の噴火は、もし事前予知が可能であったなら、又は噴火中に的確な状況把握(認知)が可能であったなら、緊急火山情報相当の噴火だったことは論を待たないと思います。しかし、結果的にはいずれもできなかった。再度このような噴火が起こるかどうかわからない。だから緊急火山情報を出さない。そのような8月31日臨時火山情報の判断には一定の理解はできます。

しかし、9月16日の警察官の身体被害は伝聞情報であるから確認できなかったにしても、20日午前のかとれあ丸接岸強行事件とそれによる身体被害を見たならば、そこで「身体を保護するため必要」と認めなければならない。「火山ガスが阿古港付近に流れていることが確認されています」などという文言を火山観測情報に挿入するだけではとても足りない。

結果的に、気象庁は8月18日、29日に続き、9月20日も緊急火山情報発表の機会を逃してしまった。9月20日は目の前で起きている「現行犯」だっただけに、爆発が伴わなかったにしても責任は重大です。活火山特措法のいくつかの条文は「爆発」を要件にしていますが、第21条はそうではありません。

もちろん、すぐに、あるいは関係者の対応が容易な週明けの明日にでも、緊急火山情報を出すことが一番望ましい。それができない、つまり、「火山現象に関する観測及び研究の成果」の「観測」の成果が生かせなかったとしても、予知連伊豆部会をすみやかに開いて「研究」の成果を生かしてほしい。予知連には、活動が活発化しているか沈静化しているか、火山ガスは「注意」でよいのか「(厳重な)警戒」が必要なのか、この2点だけ示していただければ、あとは行政(気象庁)の責任です。


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